こんにちは。ボイスケアサポーターをしています田中眞です。
2020年ものこり半月ほどとなりました。
良くも悪くも、色んなものの見方や在り方が根元から見直された一年だったような気がします。
根元から見直す、という話でいえば―
いまからちょうど250年前…それまでの音楽家の在り方を根底から変えてしまうような人物がドイツの小さな町に生まれます。
その人こそ
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン Ludwig van Beethoven(1770~1827)です。
何となくそれっぽい導入をしてみましたが
今回はベートーヴェンのどこのなにが偉大か!・・・ということではなく
僕個人の推し曲をただただ勝手に書き散らす回となります。ええ、きわめて身勝手です。
ご紹介したいのは
連作歌曲《An die ferne Geliebte 遥かなる恋人に寄せる》という曲です。
この曲は1816年、ベートーヴェンが46歳の時に作曲されました。
全体は6曲の短い歌曲で構成されており、それぞれが小曲としてありながらも、全体を通してひとつのテーマが完結する所謂「連作歌曲」という形式がとられています。
連作歌曲《遥かなる恋人に寄せる》
第1曲「丘の上に座って」
第2曲「青くそびえる山は霧の中で」
第3曲「空を軽やかにわたる雲」
第4曲「空高く舞う雲たちよ」
第5曲「五月を迎えると」
第6曲「この歌を受けとってください」
耳の不調という身体的な苦悩に加え
現在でも確かな答えが出ていない謎の人物「不滅の恋人」との別れを経験したベートーヴェン。
そんなベートーヴェンのもとに、アロイス・ヤイテレスさんという医学生から自作の詩が届きます。
その詩が《遥かなる恋人に寄せる》でした。
当時戦争により傷ついた人々への慈善活動を行っていたヤイテレスに、ベートーヴェンは支援を送りました。
その返答として贈られたのがこの詩だったそうです。
その内容は
川のせせらぎや流れゆく雲、鳥のさえずりを五感で感じながら遠くはなれた恋人を静かに、そして強く想うというもの。
「歌詩の一部はベートーヴェンが書いた。」という説もあるくらい、当時のベートーヴェンの心境に近いものと言われています。
僕はこの中の第5曲から第6曲につながる瞬間がとても好きです。
やさしさと、やわらかな希望に満ちているけど
そこに少しだけ寂しさが混じったような、そんな音楽です。
愛を結びつけてくれる春は、僕たちの間には現れない。
あるのは涙。そう、ただ涙だけ。
《遥かなる恋人に寄せる》第5曲「五月を迎えると」より(筆者訳)
この歌を受けとってください、いとしい人よ。むかし僕が聴かせたこの歌を
黄昏の中でリュートの甘い調べに乗せて、こんどはあなたに歌ってほしいのです。
《遥かなる恋人に寄せる》第6曲「この歌を受けとってください」より(筆者訳)
ジャジャジャジャーン!の《運命》や《第九》の4楽章など
ベートーヴェンに、男性的で力強いイメージを抱かれている方は
ぜひこの機会に聴いてみてはいかがでしょうか。
それでは。
どんな不安もこの歌で消してしまおう。
遠く離れていても、想う気持ちは全てをこえて
大切な人の元にきっと届いてくれるはずだ!
《遥かなる恋人に寄せる》第6曲「この歌を受けとってください」より(筆者訳)
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