こんにちは。ボイスケアサポーターをしています田中眞です。
今回はたいへんご無沙汰の「お客様の”声”」第3弾です。
会社員としてお勤めの男性、Kさんのレッスンレポート(後編)になります。
※なお掲載にあたってはすべてご本人の許可を得ております。
前編のあらすじ
ある日のプレゼン中に起こった声の詰まりをきっかけに、
プレッシャーからか、人前に立つとほぼ必ず声が詰まったり震えたりしてしまうという会社員Kさん。
最初は声の詰まりだけだったのですが…いまは声にかかわる様々なことがうまく出来なくなります。
話していると呼吸が乱れて目の前がチカチカしてくるし、常に気を張っているからなのか首肩もすぐに痛くなります。勿論声の詰まりも治りません。
色々と自分なりに工夫しているのにどうして…と悲しくなりますね。
段々と悪化を続ける声の不調。
それでもKさんはくじけずに、ありとあらゆる手を使ってご自身の声を分析。理想の発声法を身につけるべく奮闘されていました。
プレゼンしている場面をイメージして声を出してみて頂けますか?
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~~~~~、~~~~~
~~~。
(声出し中)
(本番の時でないと声は詰まらない、とおっしゃったとおり今は症状らしい症状は出ていない。
でもなにか引っかかるんだよなぁ…)
緊張の悪影響をうけないようKさんの発声法はあらゆる側面から見直されており、努力の跡が垣間見えました。
Kさんの発声に対する自己分析はこちら
「本番(プレゼン)の時でないと症状は出ない」ということもありますが、出ていた声はわるくなかったように聞こえます。
しかし僕はどうしても拭えない違和感を感じてもいたのです…。
緊張がもたらす影響と、悪化を続ける理由を考える
まず、現在のKさんの身に起こっている不調の原因を考えてみました。
あれほど細かな発声法の見直しが出来ているにも拘らず悪化を続けてしまう理由は何なのでしょうか。
意識を向ける動作が細かくなればなるほど、人は本番の緊張やプレッシャーの影響を受けやすくなります。
息の吸い方、姿勢、声の飛ばしかた、息の吐きかた…etc
本番中においてそれらの要素を細かく、完璧にこなそうとするのは非常に難しいことです。
Kさんは、そういった針に糸を通すような繊細な動作を、おおきな緊張の中で成し遂げようとしすぎていらっしゃったのではないでしょうか。
Kさんの場合、不調のきっかけとなったプレゼン中では過呼吸にまでなりかけた経験をされたわけですから、
脳がプレゼンという「本番」に危険を感じ、心身に大きなプレッシャーをかけるのは当然といえます。
そんな緊張をねじ伏せながら、プレゼン(話)の内容やクオリティを意識しながら声を出すだけでも大変なのに
そこに先ほど伺ったような発声法まで常に頭に詰め込みながら臨もうというのですから…もう心身はパンク状態です。
なんとも皮肉ですが…
状況を改善したいと強く願う真面目なKさんだからこそ、悪化を招いてしまったのかもしれません。
Kさんに合う緊張との向き合い方は?
ではKさんの心身に合う緊張との向き合い方とはどのようなものなのでしょうか。
僕はとにかくKさんの「本番」と「発声」に対する意識をまとめていくことが重要だと考えました。
そこでKさんに提案したのはおおきく、以下の2つです。
- 発声という運動を分解しっぱなしにしない
- 「どのようなプレゼンにしたいか」を中心に声を組み立てる
①の分解「しっぱなし」というのはどういう意味なのでしょうか。
先ほどKさんの声を聞いたとき『ひとつひとつの動作は丁寧なのに、つながるとなぜか不自然になる』という違和感を持ちました。
丁寧すぎるがゆえに呼吸⇒声出しなど次の動作に移る瞬間にごく僅かな間がうまれ、「発声」としての動きにぎこちなさが出たのだと思います。
なるほど。発声に関して細かく考えすぎていたのですね。
そうです。
呼吸や姿勢など、発声に関する要素を分解して研究することも重要ですが、それらを合わせることもまた同じくらい大切です。
細かく見直したテクニックを統合させて、「発声」という運動をもういちど見直してみるのはどうでしょうか。
わかりました。
でも「統合」って、具体的にどうすれば良いのでしょうか。
“どのような声を出したいか”をちょっとだけ意識しながら練習や実践に臨むと良いと思います。
ひとつひとつの動作を完璧にこなそうとするよりも意識することがずっとシンプルなので、緊張下においても悪影響を受けにくいはずです。
②の「どのようなプレゼンにしたいか」を中心に声を組み立てる、というのはそのうえでメチャクチャ有効な手段になります。
Kさんの思う、理想のプレゼン像を思い浮かべてみて下さい。
抑揚、テンポ、間の取り方…聴いていてわくわくするような、相手の心を動かすような話し方をなるべく明確にイメージしながら声を出す習慣を身につけていきましょう。
どのようなプレゼンをしたいか、という”自分の外側にあるもの”にゴールを設定した方が、細かな動作に囚われて自分の内側に目を向けるよりも成果を上げられやすいと思うのです。
なるほど、やってみますね。
練習時から本番のような緊張下をイメージするのがなかなか難しいのですが、何か有効な方法はありますか?
「やりなおしをしない」というのが結構役に立ちます。
先ほどやっていただいたように、事前に用意したテキストなどがあるならそれを1回通して読んでみる。
本番を想定し、少し気になるところがあったり上手くいかない部分があっても止めることなく声を出してみましょう。
やりなおしグセがついてしまうと、悪いところばかり気になって視点がどんどん局所的になるので「統合」がうまくいかなくなる場合があります。
あぁ、たしかに自分はちょっとでも「ミスったな」と思ったらすぐにそこからやり直してましたね。笑
やり直さずに読み上げる練習やってみます。
分析することもたまにはやってみても良いでしょうか。
もちろんです!
動作を切り分けて分析することも改善のためには重要ですから。あの分析力はそのままに、Kさんの感覚に合った「分解」と「統合」のバランスを見つけていきましょう!
その後のレッスンは
より理想のプレゼンをするために、この段落をどのように喋っていきたいか。
また緊張の影響を軽減させるためにどれだけ意識を省略できるか。
ということに焦点を置いて取り組みました。
Kさんはもう基本的な発声のテクニックや知識は持っているとみて、呼吸法や身体の適切な脱力などは最小限にとどめ
僕はいい意味でプレッシャーのかかる状況設定や前述したような「統合」のためのサポートを中心に行っていきました。
最後に
その後レッスンを何度か受けていただいた後、Kさんから嬉しいご報告を頂きました。
以下はKさんから頂いたメール文の抜粋です。
「まだ時折危なくなる瞬間もありますが、症状に悩んでいた時よりも、ずっと声が出しやすいです。田中さんから教えて頂いた「理想のプレゼン,話し方」をイメージし、そこをゴールとすることで、パニックにならず自分本来の声を取り戻すことが出来ているように感じます。本当に有り難う御座いました。この調子で、頑張ります。」
Kさんからのメールより引用
「分解」して考え、改善策を見つけることに関してもともと高い能力を持っていらっしゃったKさん。
その結果得られたご自身なりのメソッドを「統合」させることができた現在、緊張下でも良いパフォーマンスができることが増えてきたようです。
これから先がさらに楽しみですね。Kさん、ありがとうございました!
今回のレポートはこの辺で。
それでは。
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