発声障害と電話対応のおはなし

発声障害と電話対応のおはなし

こんにちは。ボイスケアサポーターをしています田中眞です。

声の不調を抱える方とお話をしていく中で

最も声の不調を感じる場面として、よく挙がるのが「電話対応のとき」です。

この記事をごらんになられている方の中にも

対面での会話は何とか乗り切れても、電話だけはどうしても苦手…💦

というお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。

今回は、電話対応時の発声をよりスムーズに行うためのポイントをいくつかご紹介したいと思います。

もくじ

なぜ”電話”はつらいのか

そもそも、どうして受話器を介すだけでいつも以上に発声が困難になってしまうのでしょうか。

多くの方々(発声障害に悩まれている方、ボイストレーナーなど)と意見交換し合う中で挙げられたものを大まかにまとめると、以下のようになります。

  1. 対面と異なり、相手の姿が見えないことによるプレッシャーがある。
    • 声の距離感が掴みづらい。身振り手振り(ボディランゲージ)で補えない。
  2. 決まったフレーズが多いため、日常会話と比べより”発音”に対する意識が強くなる
    • 脳や身体が「この言葉を言うぞ!」と身構えやすくなる。内容<発音を意識しがちに。
  3. 電話先の相手や周りで聞いている人がどう思うか気になり、心身に緊張が走りやすい。
    • 目に見えない相手や周りを想像したとき、ついネガティブな気持ちになってしまう。

あらためて、電話対応って本当に難しいんやなって…

電話対応をちょっとラクにするためのテクニック

では上に挙げた問題をふまえ、電話対応時に少しでもスムーズに発声できるようにするためのポイントをご紹介したいと思います。

キーワードとなるのは

定量の息(声)の流れを止めず、声を一点に向かって当てつづけること

です。(抽象的な表現ばかりで申し訳ございません)

そのためのポイントをもう少し具体的にご説明していきますね。

①首、肩、胸周りを解放しよう!

このHP内ブログ記事では何度かお話をさせて頂いていることになりますが

スムーズな発声をするためには、声を生み出すためのエネルギー源である息が、過不足なく身体から外に流れ出る状態をつくることが重要です。

体内で息の循環をおこなう臓器は肺ですが、肺自体には膨らんだり縮んだりする機能はありません。

肺を囲っている胸郭きょうかく=肋骨や胸骨、その隙間を埋める筋肉がうごくことによって胸腔内の空気圧が変化し、それにつられて肺が伸縮をします(動画参照 0:20あたり)。

ヒトの呼吸_深呼吸時の横隔膜と肋骨の動き(You Tubeより)

そのため呼吸をスムーズに行うためには、まず肺を取り囲むあらゆる骨や筋肉が自由に動けていることが大事だと考えています。

話が長くなりましたが…

電話対応をしている時、ご自身の身体がどのような姿勢をとっているかイメージをしてみましょう。

もし肩が内巻きになっていたり、胸が落ちるような姿勢になってしまっていたら

先に挙げた、胸郭が自由に動く状態が維持しにくくなってしまいます。

そういった時はほんの少し身体を外側へとむけるようなポジションを意識してみましょう。

無理やり胸を張ったり、肩を強く突っ張るのではなく

あくまでも自然に首、肩、胸まわりが自由にうごく位置を探っていくことがコツです!

②”声の焦点”を決めよう!

声の焦点とは、あらかじめ「ここに向かって声を届けよう」と決めた声をあてるまとのようなものです。

前章でも書かせて頂きましたが多くの場合、電話中は相手の姿が見えません。

じぶんの声を聴いている相手の反応がわからず、ついつい必死になって受話器に向かってしゃべり続けてしまう

だけれども余計に声は詰まってしまい、通話1本終えた後はもう心身ともにクタクタ…というようなお悩みは本当によく聞きます。

いまのところ、僕はこの

「受話器に向かって必死にしゃべり続ける」

という体勢が、どうも声の調子を崩してしまう要因なのではないかと考えています。

受話器という、口からの距離があまりにも近い存在がそこにあると

声や息の流れがごく短い距離で止まってしまい、声の不調を誘発してしまうのではないかと…。

おもいきってペダルを踏み込んだ方が自転車が安定して進むのと同じように、声にもあるていど息のスピードが必要となります。

声=息の距離感が近すぎると感じたときは、自分の目の前に的があるとイメージし、そこに向かって声を当てるようにしてみてください。

目の前にある具体的なものを”焦点”にしてもOK

息のスピードが安定する距離や高さは、ひとによって異なります。

なかなか安定しない場合は、

顔の前に指を1本立て、じっさいに声を出しながら指を近づけたり遠ざけたりしてみましょう。

ご自身にとってちょうどいい”声の焦点”を見つけられたら、なるべくその的から外れないよう

その1点に向かって話し続けることを心がけてみると、息のスピードはきっと安定することと思います。

③自分のキャパで呼吸する-吸いすぎず、吐きすぎない

いかなる時も自分にとってちょうどいい呼吸のリズムを乱さないことが重要です。

大げさな表現ではなく、呼吸の安定は声の安定に直結します。

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電話を取っていると、緊張して相手や周りの反応が気になってしまい、ついつい自分のキャパを外れた呼吸をしてしまいがちです。

つまり必要以上に吸いすぎたり、吐きすぎたりしてしまいます。
(僕自身にもそういう経験がありましたので、焦ってしまう気持ちはおおいに理解できます・・・)

そんな時はまずリラックスしている時の自分の呼吸を思い浮かべてみましょう。

身体に必要以上の筋収縮がかからず、しぜんと息の循環が出来ていると思います。

おそらく電話対応をしている時は、その「自然な呼吸」よりもちょっとだけ息を吸いすぎたり、吐きすぎたりしてしまっているのではないでしょうか。

バランスを崩した呼吸をすると、心身は無理やりにでも失ったバランスを取り戻そうとします。

すると皮肉なことに、つぎの呼吸を準備する段階でさらにキャパオーバーをした呼吸をしてしまうことがあるのです。

そうなってしまうと、もうなかなか悪循環から抜け出せなくなってしまいます。

呼吸が乱れたな、と思った際はぜひあの「自然な呼吸」を思い出してください。

崩れたバランスを次の呼吸で取り返す!

というよりも

いちど、自分のキャパシティにおさめる(ニュートラルに戻る)という考え方が重要です。

電話の途中で変な間が空いて、相手に不審がられちゃうかも…💦と思われるかもしれませんが

呼吸が崩れて心身がクタクタになるくらいなら、ちょっとくらい会話に間が空いた方が断然マシだと僕は思います。

たとえ事情を知らずとも、僕が電話の相手ならばそこで「この人変だ」とは絶対に思いません。

ぜひ自分のキャパを守り、呼吸からご自身の心と声をコントロールしてみてください。

最後に

いかがでしたでしょうか。

電話対応に苦労されている方はとても多く、それぞれが独自に工夫しあい、何とか日々を乗りこえていらっしゃいます。

同じような苦労をした身として、今回はポイントを絞ったご提案を書かせて頂きましたがこれも一つのアドバイスにすぎません。

「こんな方法で乗り切っています」「こうするとちょっと声が安定しました!」というようなご意見などありましたらコメント欄にてお知らせ下されば幸いです。

それでは。

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