発声障害と自律神経のおはなし

発声障害と自律神経のおはなし

こんにちは。ボイスケアサポーターをしています田中眞です。

皆様は『自律神経(じりつしんけい)』という言葉を聞いたことがありますでしょうか。

近年は医療機関にとどまらず、あらゆるメディアでも耳にする機会が増えたのでご存じの方が多いかもしれませんね。

僕自身、最近になってようやく自律神経と声との関係の深さを痛感(?)し

あらためて自律神経について調べてみることに致しました。

リハビリの参考になれば幸いです。

もくじ

自律神経ってなんだろう?

ヒトの神経を大別すると、まず

  • 中枢神経(ちゅうすうしんけい)
  • 末梢神経(まっしょうしんけい)

に分けられます。

末梢神経は全身に張りめぐらされており、からだの内外で起きていることを中枢神経に伝える神経系です。
また、中枢神経から送られた”指令”を内蔵や筋肉にはたらきかけるという役割もあります。

中枢神経は脳と脊髄から成っていて、末梢神経から送られてきた情報をもとに全身に指令を送る、いわば人間のメインコンピューターとなる神経です。

自律神経はこの中の“末梢神経”に分類されます。

末梢神経に分類された自律神経はさらにこまかく

  • 交感神経(こうかんしんけい)
  • 副交感神経(ふくこうかんしんけい)

に分けることができます。

ふたつの神経は状況により、優位性が変わる

交感神経ストレスの多い状況や緊急事態に際して体の状態を整えるはたらきがあります。
交感神経が優位にはたらくと、血管が収縮したり心拍数があがったりするなど、身体に蓄えられたエネルギーを放出させる態勢が整えられます。

副交感神経はその逆で、エネルギーを温存し身体を休めるはたらきを主におこないます。
心拍数を減らして血圧を下げ、消化や吸収、排泄をうながしたりします。

自律神経は、ふたつの神経を時と場に応じて交互に用いることで中枢神経に情報伝達をおこなっているのです。

自律神経と声の不調のカンケイとは?

現時点での僕の考えでは、自律神経と発声障害をはじめとする声の不調は

互いに大きく関係しているのではないかと思っています。

実際に自律神経の失調を抱える方の中には、喉の閉そく感や声がれを訴える方もいらっしゃるようです。

僕がこれまでレッスンをしてきた中でもー

職場での電話対応やコミュニケーションの場など、声の不調をかかえる方にとってイヤ~なストレスとなり得る環境では症状が悪化しやすくなる…

ヨガやストレッチなどの運動、生活習慣の見なおしを行ってみたところ、ボイストレーニング自体をそこまでしていなくても声の改善が見られはじめた…

というエピソードをお客様から伺いました。

これらは自律神経のはたらきと全くの無関係とは言えないのではないでしょうか。

具体的な根拠は解明されていませんが、けいれん性発声障害は中枢神経の異常が原因と考えられる説もあるようです。

中枢神経系のこれらの部位は抑制性の支配に関与していると考えられており,こうした抑制系の障害によってジストニアの症状が成立すると考えられる。ただしその部位に生ずる病変の性質については一切不明で,一般に痙攣性発声障害の症状が必ずしも進行性でなく,むしろ一旦症状が起こると固定した症状を呈することからも,変性疾患は考えにくいとされている。

廣瀬肇 著:「神経疾患と音声障害」耳鼻咽喉科展望41巻(1998)5号 p.78 J-STAGE より引用

もしも中枢神経への情報伝達をおこなっている自律神経が声の不調にも一枚嚙んでいるのだとしたら・・・

そのはたらきを見直し、整えていくことで声の改善が期待できるのではないでしょうか。

自律神経のはたらきを意識した、リハビリのポイント

では実際に自律神経に目を向けたリハビリをしていこう!と思いたったとして

どのようなことを意識していけばよいのでしょうか。

僕もやはり交感神経と副交感神経がバランスよく刺激される環境をなるべく維持することが大切だと思います。

具体的にどのような方法があるか考えてみましょう。

・副交感神経を優位にしたい場合

僕が言うまでもありませんが、声の不調と向き合う毎日はストレスの連続です。

声になんら不調のない方々がイメージする「普通に生活する」を実現させるために相当なエネルギー使って過ごしています。

先ほど説明をした通り、そういった環境下では交感神経が優位に働きますので

バランスを取り戻すためにも副交感神経を刺激していくことが求められます。

副交感神経を優位にさせるための代表的な方法としては、以下のものが挙げられます。

  1. 食事
    • 三食たべる
    • 刺激物(香辛料、アルコール、カフェイン等)をちょっと控えてみる
    • よく噛む
  2. 睡眠
    • 可能ならば6時間以上の睡眠を確保する
    • 難しければレム睡眠サイクル(90分)単位の睡眠時間を意識してみる
  3. 運動
    • 運動の負荷量、習慣化にとらわれない→1か月に1回運動する日をつくる、でもOK!
    • おおきく、ゆっくり身体を伸ばす”静的ストレッチ”をしてみる
  4. その他
    • 鼻呼吸に切り替える
    • ひなたぼっこする
    • 入浴時間をいつもより長めにする

これらに加え、僕が意識しているのは

「声が出ない自分に違和感を覚えない環境に身をおくこと」です。

黙っていたって、声がうまく出なくたってなぁんにも支障がないし、だれも気にしない

そんな場所にできるだけ長くのんびりといることを心がけてみて下さい。

・交感神経を優位にしたい場合

え、そんな必要あります?というお声も聞こえてきそうですが…笑

僕は副交感神経を刺激することと同じくらい、交感神経のはたらきも重要だと考えています。

「バランスよく」自律神経を稼働させるには、やはり交感神経の協力がどうしても必要なのです。

ただし、闇雲にストレスを与え続けることは悪影響となってしまうことが多いです。

なので「質の良いストレスとは何かをかんがえ、実践する」ことが交感神経を上手に刺激させるコツとなります。

例えば、こんなやり方はどうでしょうか↓

  • ニガテな第一声の発音時に心身がどうなっているか、いくつ気づけるか試す
  • 同僚とのランチ中、1回だけ自分から話題を振ってみる
  • 大好きなアーティストの曲を覚えて鼻歌で1曲歌いきる
  • コンビニでホットスナックを注文してみる
  • 発声練習、発音練習のハードルを少し上げる(声量、声の高さ、スピード、音階を広げるetc)

ポイントとしては

「発声」という枠組みからなるべく外れないこと、うまくいかなくてもいいから挑戦する!を重視することです。

交感神経を刺激する=心身にストレスをわざとかけることが目的なので、必ずしも成功しなくても良いのです。

筋トレなどにも言えることではありますが、「今の自分にもギリギリ乗り越えられそうなハードル」を適切に設定していくことは

無理なく且つ質の良いストレスとなって交感神経を刺激し、リハビリの効率を高めてくれると思います。

最後に

いかがでしたでしょうか。

自律神経のはたらきは交感神経と副交感神経のバランスありきです。

ストレスに対抗できるエネルギーの活発さか休息か、今のみなさまにはどちらが必要でしょうか。

心身=自律神経のサインをよく観察すると、よりよい声を手に入れるためのヒントが隠されているかもしれませんね。

それでは。

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