【和訳】「 声の不調を抱える女性歌手とない女性歌手の腹筋機能に違いはあるか?」

【和訳】「 声の不調を抱える女性歌手とない女性歌手の腹筋機能に違いはあるか?」

こんにちは。ボイスケアサポーターをしています田中眞です。

アメリカ国立生物工学情報センター –National Center for Biotechnology Information(NCBI)が提供しているNational Library of Medicineにて、ちょっと面白い研究が掲載されていました。

「 声の不調を抱える女性歌手とない女性歌手の腹筋機能に違いはあるか? -Are There Differences in Abdominal Muscle Function in Female Singers With and Without Voice Disorders?
※原文はこちらから読むことができます。

というものです。

今回はこの研究を頑張って訳すとともに、結果に対する自分の考えなどを書き綴っていきたいと思います。

もくじ

研究本文&がんばって和訳してみたよ

まず、以下に研究の全文と僕による稚訳を載せておきます。

原文中の※は注釈のために後から付け足したものです。

Abstract
Objectives: The purpose of this study was to determine the motor function of the abdominal muscles in singers with and without functional voice disorders and to examine them for possible differences. Additionally, the breathing behaviour and posture control was investigated.

概要
目的:機能的な声の障害がある場合とない場合の女性歌手の腹筋の運動機能を測定し、考えられる違いについて調べた。さらに、呼吸と姿勢も併せて調査した。

Methods: Female subjects (n = 20) with differing levels of professional competence were used to provide the data for analysis. By using the Singing Voice Handicap Index (SVHI) the grade of dysphonia could be measured, and the subjects were organized in groups. The change of muscle thickness of the M. transversus abdominis (TVA) and the M. obliquus internus abdominis (OIA) during different singing tasks was measured by using ultrasound. The subjects were then asked to perform the Abdominal Hollowing Test (AHT) with the STABILIZER. Finally, the subjects were all filmed while singing. The videos recordings of the singing sessions were analysed by an independent clinical expert regarding breathing and secondary motor activities (SMA). For the statistical analysis, the Mann-Whitney-U Test and the Chi-Square-Test was mainly used.

方法:歌唱能力が異なる20名の女性被験者を対象に、分析用のデータを提供した。 Singing Voice Handicap Index(SVHI)※1.を使用することにより、声の不調の程度を測定することができ、その結果をもとに被験者を数グループに編成した。グループごとにさまざまな歌唱作業中の腹横筋(TVA)と内腹斜筋(OIA)の筋肉の厚さの変化を超音波を使用して測定。次に、スタビライザーを使用して腹部中空試験(AHT)※2.を実行。最後に、歌いながら被写体をすべて撮影した。歌のセッションのビデオ録画は、呼吸と二次運動活動(SMA)に関して臨床専門家によって分析された。統計分析には、主にマンホイットニーU検定とカイ二乗検定を使用した。

※1.30余りの質問に5段階評価で回答させることで、回答者が歌唱に対してどのような不安、不調を抱えているのかを測定する方法。音声障害に対する自覚度の把握や適切な治療法を選ぶうえで有効とされている。

※2. Abdominal Hollowing -YouTubeより(参考動画)

Results: The results showed a significantly thinner TVA in the group with dysphonia in comparison to the group without dysphonia. Ultrasound measurements showed significantly higher changes of muscle thickness of the TVA during singing tasks in the group with dysphonia. Regarding the AHT there was a significant difference between the two groups. The group with dysphonia was not able to increase the pressure by 15mmHg. Furthermore, the healthy subjects demonstrated abdominal breathing, while the group with dysphonia present with thoracic breathing. Additionally, it was noted that the subjects with dysphonia showed a higher level of associated movements especially at and/or on the lumbar spine, cervical spine and the left arm and shoulder.

結果:声に不調のないグループと比較して、不調を抱えるグループでは有意に薄いTVAを示した。超音波測定は、不調のあるグループの歌唱中、TVAの筋厚に有意に高い変化を示した。 AHTに関しては2つのグループ間に有意差があった。不調のあるグループは圧力を15mmHg上げることができず、さらに不調のないグループは腹式呼吸を示したが、不調のあるグループは胸式呼吸を示した。特に腰椎、頸椎、および左腕と肩でより高いレベルの関連する動きを示したことが注目された。

Conclusion: Differences in TVA-recruitment, breathing behaviour and secondary motor activities while singing were found. This study sparks new ideas for neuromusculoskeletal assessments and therapy.

結論:2グループ間において、歌唱中の腹筋運動、呼吸行動および二次運動活動の違いが見つかった。この研究は神経筋骨格の評価と治療のための新たなアイディアを生み出すものといえる。

この研究結果から考えられること

今回は無責任に(?)和訳だけを載せてそこで終了とさせていただこうかと思ったのですが、

その過程でいくつか気づいたこと、考えたことがでてきたので以下に軽くまとめておきます。

①「声に不調のあるグループ」≠発声障害者

声に不調のあるグループを指す言葉として、本文中では”Dysphonia”(発声障害)という言葉が用いられていますが、

被験者のグループ分けに使われたSVHI=Singing Voice Handicap Indexの内容を見るに、病気ではなく単に歌唱技術が十分でない人もDysphoniaグループに含まれてるようです。

読み込む際にはDysphoniaグループの被験者がみな一様に、声帯をはじめとする発声器官に機能不良を抱えているとは限らないと思っていた方が良いかもしれません。

②腹筋への意識が高すぎると、声の不調を引き起こしやすくなる?

Dysphoniaグループは腹横筋が薄いけど、歌唱中の変化が大きい(どういう変化なのかは分からず)という結果から、

声に不調を感じる方は 、歌を歌う時に

・呼吸に使う腹筋群が他グループに比べて少し弱い
・「腹筋を使う」という意識が高すぎる

ということが考えられるのではないでしょうか。

腰椎,肩等が呼吸と連動するほどガチガチに「腹筋に力を込めること」はできるが、肝心の歌唱時にうまく機能していない状態。

それどころか逆に身体を過緊張状態にさせてしまい、声の不調に一役買わせてしまっている可能性もあります。

いい声を出したいけど、どこをどの程度力ませていいかわからない、というような悩みが、

歌唱時における腹横筋のおおきな変化というカタチとなって表れている…といえるのではないでしょうか。

➂適切な緊張を身につけることで発声は安定する

安定感のあるスムーズな発声は、腹筋群の収縮を強化し息の流れを強くさせることで達成されます。

ちょっと話がそれますが…過緊張性発声障害の場合などは、声帯の機能不良や声を出すことに対するプレッシャーから無自覚に声門上部を圧迫することで代償的に声を強く出そうとしてしまうのです。

いうなれば、Dysphoniaグループの方々もそういった「不適切な緊張」がクセとなってしまっているのかもしれません。

これらの改善には呼気流の安定=腹式呼吸が有効といえます。

息という声を生み出すための唯一のエネルギーを安定供給出来て、かつ身体に”ムダな”緊張を与えにくいからです。

身体に力が入りすぎていても良くないし、脱力しすぎも良くありません。

呼気流を安定させるための、適切な緊張を身につけることで声の不調は改善していくと考えられます。

最後に

2022年一発目の記事はちょっと趣向を変えてみました。いかがでしたでしょうか。

個人的に、発声障害を克服するためには腹式呼吸の体得は”重要”ではあっても”必須”ではない。

というのがいまの僕の意見なのですが、この報告を参考に改めて研究と実践を重ねていきたいと思いました。

こういった研究をテーマに自分の考えを纏めていく記事は今後もどこかで行っていきたいですね。

それでは。

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