発声障害と内喉頭筋のおはなし

発声障害と内喉頭筋のおはなし

こんにちは。ボイスケアサポーターをしています田中眞です。

『発声』という運動は、実に様々な筋肉や骨、関節が連動して成り立っています。

ひとくちに”声を出す”といっても、音の高さや大きさなど様々な違いがありますね。

今回は、発声の中でも「声をつくる」役割を担う重要なメンバー、

内喉頭筋(ないこうとうきん)について書いていきたいと思います。

もくじ

内喉頭筋を成す筋肉

内喉頭筋はその名の通り喉頭の内側、声帯周辺を取り巻く筋肉群です。

首のほぼ中央に位置し、甲状軟骨(こうじょうなんこつ)などともくっついています。ざっくりと、のど仏の裏にある筋肉群とイメージしていただければ良いと思います。

歌の発声-中之島のBOW様より引用

ないこうとうきん、という単一の筋肉ではなく、内喉頭筋はいくつかの筋肉で成り立っています

まず大きく

  • 声帯を閉じる→声帯閉鎖筋群
  • 声帯を開く→声帯開大筋
  • 声帯を引きのばす→声帯緊張筋

に分けられ、そこからさらに

  • 声帯閉鎖筋群
    披裂筋(ひれつきん)
    甲状披裂筋(こうじょうひれつきん)
    外側輪状披裂筋(がいそくりんじょうひれつきん)
  • 声帯開大筋
    後輪状披裂筋(こうりんじょうひれつきん)
  • 声帯緊張筋
    輪状甲状筋(りんじょうこうじょうきん)

と細かく分けられます。漢字がたくさん並んでますね。

“声を出す”ことは、チームプレイだ

声を出す、という運動は上述した筋肉たちがたがいに収縮し、連動し合うことで成り立っています。

声を出すための筋肉はひとつではない、ということですね。

「声」から「言葉」へと変化させていくのならば、さらに別の筋肉や骨などのはたらきが関わってくるでしょう。

発声というひとつの言葉で表現するのは容易いですが、それを実現するにあたって

僕たちの喉のなかで複雑なチームプレイがおこなわれているということを覚えておいて頂けたらと思います。

声の不調が起きている時はどうなってる?

では発声障害を発症しているとき、僕たちの喉はどうなっているのでしょうか。

大雑把にお話をすると、先程挙げた内喉頭筋のチームワークが乱れ、発声がスムーズに行われていない状態となっています。

いわゆる内転型痙攣性発声障害では、声帯を閉鎖させる甲状披裂筋ががんばりすぎてしまい、声を出そうとすると詰まってしまいます。

外転型痙攣性発声障害では後輪状披裂筋の力が強くはたらきすぎて、声帯が必要以上に開大し、息漏れやかすれ声などの症状となって表れます。

それだけではなく声帯の上部に位置する仮声帯とよばれるヒダやなど、内喉頭筋以外の様々な場所からも干渉が入ります。

発声をひとつの団体競技と例えてみると

正常なときには、脳といういわば監督からの指示を受けて(あるいは受けていなくとも)内喉頭筋たちが互いに助け合い、素晴らしいチームプレイをしていたのに

発声障害になると、一人の選手によるワンマンプレーでチームワークは乱れ、それをみかねたマネージャーやコーチ、観客までコート内に立ち入ってプレーに干渉しようとする…

そんな感じでしょうか。

これには監督(脳)もどうしたら良いかわからず頭を抱えたくなりますね…

内喉頭筋のはたらきを整えるポイント

内喉頭筋のバランスをとりもどし、スムーズな発声を行うためには

外部からの余計な干渉を避け、内喉頭筋全体ををしっかりとはたらかせることが重要だと考えます。

取り組む順番としては

  1. 外部からの過干渉を取り除く
  2. 内喉頭筋のチームワークを整える

がおすすめです。以下に簡単な実践方法を書いてみます。

➀外部からの過干渉を取り除く

まずは選手(内喉頭筋)以外の人たちが無断でコートに立ち入らないようにしましょう。

カギとなるのは、喉頭を中心とする身体の脱力です。

下あごや舌の力を思い切って抜くと理想のフォームに近づきやすくなりますが、力の抜きすぎも姿勢を崩してしまうためあまりおススメはできません。

そんな時はイスに座り、座面(骨盤)から頭蓋骨までのラインがまっすぐになるように意識を割いてみて下さい。

骨盤→背骨→頸椎(首の骨)→頭蓋骨

のラインがきれいに保たれていると、外部筋の過干渉を受けにくくなります。

※バランスを整える方法はこちらも参考にどうぞ

のど仏を軽くつまむようにしながら少しずつ発声をおこない、適切な脱力がおこなわれているかどうかチェックするのも有効だと思います!

➁内喉頭筋のチームワークを整える

外部からの干渉を避ける体勢が出来たらじっさいに内喉頭筋をはたらかせていきます。

ところが内喉頭筋は首や手足と違い、自分の意思で動かせる筋肉(随意筋)がほとんどありません。ジーザス…

さまざまな声の出しかたを実践することで、内喉頭筋を間接的にまんべんなく刺激していくことにしましょう。

実践していくにあたっては

➀で得られた適切な脱力状態をキープすること
➁内喉頭筋全体をはたらかせている、という意識を持つこと

というポイントを抑えつつ行っていくようにしてみて下さい。

内喉頭筋をまんべんなくはたらかせるための方法はいくつかありますが、僕はグラデーション発声ウェービングをお勧めします。

以下の動画を参考にぜひチャレンジしてみて下さい!

~グラデーション発声~
~ウェービング~

最後に

いかがでしょうか。

声をつくり上げるために、僕たちの喉の中ではたくさんの筋肉が稼働しています。

あまりにも構造が複雑すぎるとちょっと身構えてしまいますが、その多くは自然に身を任せることで自動的かつスムーズに活動してくれるものばかり。

僕たちは内喉頭筋らを直接操作することよりも、そんな「喉のチームメイト」たちがのびのびと動いてくれるような環境をつくっていくことを心がけていくべきなのかもしれませんね。

それでは。

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